三陰交は妊婦には禁忌とされてきました。

昔話にも、妊婦の中の子がすぐ見たいがために妊婦の腹を割くといった暴君を前に、見かねた中医が合谷を補して三陰交を瀉したところ双子が出てきたというような話もあります。

古来から三陰交は足の三陰経が交わるところで婦人病には効果があるが妊婦には禁忌とされてきました。

しかし、1950年に東洋医学を学んだ産婦人科医の石野信安先生が、それまで妊娠中禁忌とされた三陰交に灸をして80%の回転率が得られたと報告しました。「異常胎位に対する三陰交施灸の影響 石野信安」

石野信安先生は三陰交の灸が有用であることを長い時間をかけて訴えました。

私の経験でも、三陰交を強く刺激すると子宮が収縮するような感覚がするとよく言われます。

足のツボ刺激が子宮の適度な収縮と弛緩を作り出し、胎児が回転しやすくなると考えられます。

私の恩師は

「三陰交でそうそう生きた胎児は降りてこない」「降りてくる子は残念ながら母体内で死んでしまっている時だ」

「逆に母体内で死んでしまっているが出てきてくれない場合三陰交に強刺激して出してやらねばならない」

そう言っておりました。

また別の恩師は 三陰交で強い刺激を加えることで一度堕胎に成功したので、中絶できると看板を上げていました。

ですが、うまくいったのは一度だけだったと言っていました。患者さんから相当文句を言われたそうです。

いずれにしても妊婦の三陰交へ鍼灸をするときは気をつけねばなりませんが、効果の高い経穴ではあります。

少なくとも分娩時や出産直前には効果的なのではないでしょうか。