鍼灸師ってメジャーな仕事ではないので、小説の主人公になることなんてめったにないんですが、たまにあっても正直鍼灸師から見てリアルなものはあまり見かけません。

すごい人が一発で治しまくるのはいいとしても、殺し屋だったりとか、怪物と鍼で戦うとか。。。もう実際の鍼灸とかけ離れたものがほとんどです。

でもこの「鷹野鍼灸院の事件簿」は作者の乾緑郎先生が現役の鍼灸師でもあるということで、鍼灸師から見ても全然違和感なく読めました。もうものすごく地味ではありますけど。

しかも事件は、鍼灸絡みの事件ばかりです。鍼灸師なら誰もが一度は考えることや感じることも多く、「あるある」「ああこんな人いるいる(笑)」と、うなずきながら読みました。

主な登場人物は鷹野鍼灸院の新米鍼灸師と院長。

それぞれの短編で出会う人物はいろいろな患者さんや、着流しで治療する高名な鍼灸師、盲目の刺さない針専門の鍼灸師、鍼を刺すのが怖い鍼灸学生、外国人鍼灸師、鍼灸学校教員、獣医さんなど。

鍼灸ではどうしても専門用語が多くなりがちで、考え方や手法などは異業種の方にはかなり説明が必要になります。だからどうしても鍼灸に関する説明的な文章が多くなるし、事件もかなり小さめですので(窃盗とか不正受給とかかなり地味めの事件)鍼灸に興味のない人には正直あまりお勧めできませんが、鍼灸に興味のある方はこれをきっかけに鍼灸にもっと興味を持ってもらえたらなと思います。

作者の乾先生はほかの作品『完全なる首長竜の日』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞されてます。勢いのある先生に鍼灸を題材にした小説を書いてもらえて嬉しいです。個人的には売れて欲しい一冊です。

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