鍼は効かなかったとおっしゃる方もよくご来院されます。他の鍼灸院で鍼治療を受けたことのある患者さんです。

ですが鍼といっても鍼灸師によってその手法は様々です。当院の鍼灸と全然違うかもしれません。

鍼灸にも流派が沢山あり、それぞれの良さがあるのですが、

ここでは鍼の感覚について少し書きたいと思います。

鍼は得気がなければ効かないと言われます。得気(トッキ)とは鍼をしたときに現れる感覚です。

患者さんが感じるものとしては、だるい、しびれる、はれぼったい、とか、鈍い重い感じなどです。

響きとも言われます。

鍼をする側の感覚としては、鍼が重くなる感じとか、逆に軽くなる感じなどです。魚がはねるような手応えも良く感じます。

これを得気といいます。

このどちらかがなければやはり効かないと私も思います。少なくとも効き目が弱い。

鍼に電気を流す電気鍼は人工的に得気するようなイメージがありますが、電鍼するにしても得気した後に通電するべきです。

得気しないまま通電してもやはりこれも効き目が悪いように思います。

鍼の響きは調節が難しく、技術を要するために得気をせずに鍼をし通電する治療院が多いようですが、「鍼は効かなかったと」いって当院に来院される患者さんの三分の一くらいの方がこのパターンです。

ちなみに三分の二は無痛無感覚の鍼です。当院でも無痛無感覚の鍼や、非常に浅い所を治療する鍼も使いますが、深いところで得気しないと効き目が弱い疾患にはよく遭遇します。

無痛無感覚の鍼や、浅い鍼は特に日本で発達した鍼法ですが、非常に繊細な技術です。

下手をするとただ単に要所を外しているので響いていないだけということも考えられます。

無痛無感覚の鍼や、浅い鍼で治療して効果を確実に出す先生ははっきり言って少ないです。それで治る方も沢山いらっしゃるでしょうが、治らなければ別の方法を試すべきです。

響きのある鍼で効かなかった人は「証」にもよりますが、逆に無痛無感覚の鍼を試してみたりします。その場合はこちら側、私の手の感覚の得気だけになります。

鍼で効かなければ灸を試してみることも多いです。鍼だけで灸をしないところも非常に多いです。

お灸は鍼に比べると忘れられがちですが鍼灸は灸も鍼と同じくらいに大切です。

当院は鍼灸の手法を使い分けます。他の鍼灸院で効果がなかった方はどういった鍼灸を受けたのかお聞きしてそれも参考にしております。同じことをしても効かないかもしれないからです。

なぜ効かなかったのかを考え、治療のヒントにしております。